私たちについて

養生めし 菜の香 というお店は、前職で出会った私たち2人が、お互いに意見を出し合って、共に作り、共にお店をきり盛りしています。

元々は福祉の世界で仕事をしていた私たちですが、共通の関心事が「食」だったことがひとつの縁で、全くの異業種であるこの世界に飛び込みました。
ただ、同じ会社で働いてはいましたが、仕事上の接点がほとんどなかったので、ほんの数年前までお互いの存在すら知りませんでした(と私は思っているけど記憶違いかも...笑)。

その後、それぞれに交友のあった共通の同僚が、何故か強引に私たちを食事に誘ってくれたことをきっかけに、私たちは少しずつお互いのことを知るようになります。

<前職で感じたこと>
福祉の仕事に携わる中で、様々な夢や希望を思い描く人たちと出会いましたが、その夢や希望に向かうためには当然エネルギーが必要で、中でも「健やかであること」は大切な要素でした。

・やりたいことがあるのに、いまいち元気がでない
・なんとなく不調で、そのことのほうが気になる
・病院に行くほどではないけど、どうにも気力が湧かない

明確な病気や障害とはまた違う「不調」が続くという人も少なくなく、そうした人をサポートをする中で、「健やかさ」の土台になる食の重要性について考えるようになりました。

皆さんもしかしたら似たような経験があるかも知れませんが、店主のうちの1人は焼肉やラーメンを食べると必ずと言っていいほどお腹をこわします(笑)

それはその日の体調だけでなく、その食事が体質にあまり合っていないことも理由の一つで、そうした食事を続けると体調も低空飛行を続けます。

ずっと低空飛行を続けていると、なんだか気持ちもどんよりして、いわゆる「不調」の毎日が続くのです。

反対に、体質に合っているなと感じられる食事をした翌日は、決まって身体も心もスッキリしていて、朝の目覚めもいいのです。

そうして始まる1日は、自分自身の「今日」を後押ししてくれますし、何よりほんのちょっとポジティブになれることで、もともと自分が持っている力を発揮しやすくなります。

ワクワク楽しい1日や、目標に向かって頑張れる日々は、そんな「健やかさ」があってこそ成り立つ。そう思うのです。

福祉で提供できるサービスは体系化され、必要とする人に届きやすいサービスになりつつあります。そして、サービスを必要とする人によりよいサービスを届けようと、志を持って働く人たちも大勢います。
ただその逆に、体系化されたサービスの中では細かな制約もあるわけで、既存のサービスの枠組みの中だけでは対象者が限られ、私たちが漠然と届けたいと思っていた、「食を通じた未病改善」も思うようには届けられないと感じていました。
1人でも多くの方に「未病改善*」を知ってもらいたい、そのためには福祉という枠組みにこだわらず、自分たちが届けたいと思っているものを、必要としている人に届けられる形にして届けよう、そう思い至ったのです。

*健康と病気の間にあるゆらぎの状態

<もうひとつの縁>
共通の関心事が「食」だったことが、私たちを近づけてくれるひとつの縁になったわけですが、もうひとつ、私たち2人にとってかけがえのない縁がありました。それが、私たちを強引に食事に誘ってくれた共通の同僚です(笑)。


彼女は、日常の中に「自分にとって心地のよい時間」を作ることがとても上手な人でした。心地のよい空間で自分が欲している食事を選んで、自分を労り労う時間を大事にしていました。でもそれは自分だけに向けられるものではなく、一緒に過ごす人にも自然と向けられていたのです。
時々誘ってもらって心地よい空間で食事をすると、自分を労っているなぁと思えるその時間が愛おしく、毎回満ち足りた気持ちになりました。

自分自身を愛でてあげるとでも言うのでしょうか、その大切な感覚を教えてくれたのが彼女です。

単に食に関わるだけじゃなくお店を構えようと思えたのは、彼女がくれた「食+空間」という心地のよい体験から影響を受けています。

彼女は長い闘病の末に若くしてこの世を去ったのですが、だからこそ、自分のために自分を大事にすることの大切さを知っていたんだと思います。そして、彼女自身が大切に思う人のためにすることもまた、彼女にとっては自分を大事にすることの1つだったのかもしれません。

自分自身や周りを見渡しても、「自分を大事にする」って案外難しかったり、ついつい後回しになりがちだな…と思います。

例えば、母という役割・妻という役割・子供から見たら「親」という役割・親から見たら「子ども」という役割・会社では部下だったり上司だったり、地域ではご近所さんという役割があったり…と

人それぞれにいろんな立場や役割が複数存在していて、その役割を頑張ることの方に目が行きがちかもしれませんが...

菜の香という場所に来てもらうことを通して、短い時間でもその役割からちょっと距離をおいて、「自分を大事にできたな〜」という今日を感じていただけたら。

私たちはそんな体験を1人でも多くの方に届けたいのです。

彼女が結びつけてくれた縁を、私たちはこの先も大切にしていこうと思っています。

お店をやると2人で決めてからというもの、時間を見つけては2人でお墓参りに行き、彼女の墓前でペチャクチャと近況を報告したりしています。きっと彼女も喜んで聴いてくれている、そう思います。

<「菜の香」という出発点>

屋号の「菜の香」は、とてもシンプルですが、店主である2人の名前から1文字ずつとっています。


お互いが思い描いている未来に少しでも近づくためお店を構えることになりましたが、飲食の提供は手段の1つ。菜の香という場所は「誰か」や「何か」と繋がりながら、新たな価値を生み出していくための出発点。食の提供だけに視点を狭めず、地域に開かれた「心地のよい場所」にしていきたいと思っています。